Dr. Rosamund Vallings

シドニーME/CFS臨床−科学会議、200112
Dr. Rosamund Vallings


Mail Magazine ME/CFS Information, No.67,68,70,77,80, 2003.1.26-2003.6.30.

原文:http://www.co-cure.org/sydney1.htm
原題:The Sydney ME/CFS Clinical and Scientific Conference December 2001
著者:Dr. Rosamund Vallings



2001年11月30日と12月1日の2日間、オ−ストラリアのシドニ−でAlison Hunter Memorial Foundataionによる第3回国際臨床科学会議が開催されました。同会議では、知識に基づいた、良性筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群のより正確な診断を行うための議論が行なわれ、世界各国から最先端の研究者と医師が参加していました。私自身も光栄にも同会議に参加させていただくことができました。初日は、同会議で発表される内容についての非公式会議が行われ、続いて2日目には、幅広い分野にわたって興味深い発表がなされました。会議は、Simon Molesworth(QC)氏の発表で始まりました。Molesworth氏からは、オ−ストラリアではCFSに関する予算が限られているという問題、新しい臨床ガイドライン(既に公表されており、心理的偏見を生じさせるのではないかと危惧されている)についての問題、この複雑な疾患の理解を広めるために、教育と貢献の両面で協調して行く必要があるなどの問題提起がなされました。




最初のセッションは、Anthony Komaroff教授(訳者注:CFSの権威)による講演、CFSバイオロジーの概要、から始まりました。この講演の要旨は以下のとおりです。疲労を持つ人(うつ病、貧血、甲状腺機能低下症などによる)のうち約2%がCDCの慢性疲労症候群の診断基準を満たしており、この2%のうち90%の方々は、インフルエンザ様の症状を伴う急性発症でした。神経−内分泌研究、治療研究、正式な心理診断などの結果には、CFSとうつ病には明確な違いがみられています。過去に精神病の経験のあるCFS患者は少ないですが、CFS患者の50%にCFS発症から数年後に、心理的疾患の発病が見られています。

CFSに対する特定の検査はありませんが、免疫複合体の低レベル循環、総複合体の増加、活性D8細胞の増加、IgG値の上昇、異型リンパ球群、NK細胞の機能低下、抗核抗体レベルの低下、RNaseL経路の異常など、CFSの識別を可能とする研究結果が増えています。

また、脳と神経系に関する研究から、多くの異常があることがわかっています。神経イメ−ジ法を用いたMRIにより、特に皮質下部で、症例の78%に点状の異常部位が見られています。また、脳画像診断スキャン(SPECT)により、かん流と新陳代謝にも障害が見られています。しかし、これらの検査は、診断を目的とした物ではありません。認知における相違、特に認知過程の異常や反応時間の遅滞がみられ、これらの認知異常は心理学的な病気の重複によって説明することはできません。交感・副交感神経の抹消神経症を伴う自律神経障害が見られており、50%の患者は、神経系の神経調節性低血圧や体位性頻脈症候群の兆候を示しています。また、ほとんどの患者で、デルタ波睡眠中にアルファ波侵入を伴う睡眠障害を持っています。HPA系の変化によって示されるように、神経内分泌機能障害も見られています。副腎皮質の縮小によるCRH生産の低下、24時間の尿コルチゾ−ル・レベルの低下が複数の研究で報告されています。また、プロラクチンと成長ホルモンレベルが低下している場合もあります。脳への影響は非破壊的で進行性ではありませんが、特徴的な機能障害を引き起こします。

CFSの病因となる単一の病原体の存在は、明らかになっていませんが、HHV6などのウイルスの再活発を示唆する結果が報告されています。感染性単核球症、Q熱、ライム病などが、CFSの発症と関連していると考えられます。HHV6は、成長過程においてほとんどの人に感染し、人は生涯に渡ってHHV6と共存していますが、CFS患者では、対照群と比べ、再活性化されている割合が高くなっています。このウイルスは、神経細胞と中枢神経系に影響を与えるため、神経障害を引き起こし、免疫力が低下している方の場合には、脳炎の原因となります。また、HHV6と多発性硬化症(MS)との強い関連性を示す証拠も見られています。

三環系剤の低用量の服用によるCFS治療は、線維筋痛症にも効果があります。これらの薬は、睡眠障害を改善するために、CFSの治療で広く使われているものです。また、健康状態の改善方法として、認知行動療法や段階的運動療法なども知られています。

Komaoff教授は、これらの点を考慮した結果、「CFSは器質的である」、「多くの患者で脳の辺縁系に異常が見られ、免疫システムの異常性調節は、辺縁系の異常の結果である可能性がある」、「単一の明確な原因は考えられないが、複数の発症因子(感染・有毒物質・ストレス)が関与している可能性がある」と結論付けています。




●Pascale de Becer (Brussels, Belgium)により、ヨ−ロッパの患者を対象とし、HolmesとFukudaの定義を用いCFSの診断を行い、両者を症候学的に比較した結果について発表が行われました。Holmesの定義は、CFS患者とこのCFSの定義を満たさない患者を明確に区別するための症状により重点が置かれているため、症状は(Fukudaの定義に比べ)10項目多くなっています。そのため、CFS患者の選択時の感度、特異性、精度が良くなっています。Fukudaの定義を満たす患者には、症状の軽い方が多く含まれており、臨床における混乱の一因となっています。したがって、新しい定義を作成することは、CFS患者の選択能力の強化につながり、また、重症度指数(severity index)と組み合わせることで、その後のサブグループ化にも有効であると考えられます。


●CFS専門の開業医Don Lewis (Melbourne, Vic)は、患者に来院の前にアンケ−トを行っています。このアンケートは、現在の臨床状況を説明したり、診療時間を短縮すると同時に、今後の治療経過との比較を行うための基準として用いられています。400人の患者のアンケート結果を分析したところ、頻度が高い症状は、高い順に、睡眠障害、疲労、認知障害、神経症状、気分変調、胃腸障害となり、この結果は、性別、年齢、病気の罹患期間によらず同じ傾向を示しました。


●小児CFSの有病率、統計、経過に関する発表がNigel Speight (Durham, UK)により行われました。この発表では、彼が北イングランド地域で10年に亘って行なった経過観察について報告されました。調査期間中の発症率は増加傾向を示し、1995年にピ−クが見られました。患者の発病時の年齢は、19ヵ月〜16歳でした。 また、第一近親者にCFS患者がいる:14%、偏頭痛の病歴を持っている:67%、偏頭痛を持つ第一近親者がいる:57%でした。痛みについては、あまり痛くない:12%、中程度の痛みがある:39%、深刻な痛みがある:49%でした。 完治例は、15症例(31%)あり、そのうち2例は重症例でした。また、大きく症状が軽減した症例は、7例(14%)でした。完治した患者の平均罹患期間は、5.1年でした。完治していない方のうち7名 (14%)は、重篤な症状が続いていました。学校に通えない場合が多く、その期間は、平均で1.8年でした。また、これらの症例には、多くの予測不可能な変化が見られることが報告されました。


●Richard Burnet (Adelaide, SA)は、CFS患者に共通して胃腸症状が多く見られることを明らかし、これらの症状に対して適切な評価が行われてきていないと指摘しています。 CFSと診断を受けた全ての患者を対象にCFSに関連する項目が付加された標準問診調査が行われました。被験者数は、患者120名、対象群56名で、アルコ−ル不耐性を示さない患者は除外されています。この調査の結果、CFS患者の86%、コントロールの56%にGIの症状があることが明らかとなりました。続いて、食道、胃、腸の異常についての考察が行われました。食後の膨満感と腹部の不快感は、CFS患者で顕著であることが明らかになりました。固形物と液体の排出時間について調べた結果、91%のCFS患者で胃と腸からの排出の遅れが見られ、それぞれ、液状の場合には89%、固形物の場合には67%に遅れが見られました。これらの異常多くは、液体の排出の遅れであることから、末梢系ではなく中枢系が消化の遅れの原因であることが示唆されます。自立神経に障害がある場合には、糖尿病の場合に見られるように、固形物の排出を遅らせる傾向が見られるからです。運動の遅滞はバクテリアの過繁殖を促すことが多く、GI障害は、毒物や水銀中毒によるものではないと思われます。治療においては、先ず固形物なのか、液体なのかを明らかにし、栄養面を注意はらう必要があります。食事は、一回の量を減らして数回に分ける、水分は食後20分後に取るようすることが効果的です。また、MaxolonやCisaprideが効果があるかもしれません。


●Henry Butt (Newcastle, NSW)は、バクテリア症(BC)について検討を行い、患者には複数の腸症状が見られるが、糞便検査では腸の炎症が現れないと述べました。また、BCを持つ方は、そうでない方に比べて、痛みと疲労がより深刻となる傾向を示しました。CFS患者では、腸内細菌の様相に変化が見られ、大腸菌の総計は、健康な被験者よりもはるかに低いことが明らかとなりました。乳酸菌(the lactic acid bacteria)と腸球菌(Enterococcus spp)の総計が非常に高く、Bifidobacterium属が大きく減少していました。
腸内微生物の生態の変化、特に大腸菌の減少は、疲労と強い関連を持っています。セリン(serine)、アラニン(alanine)、インド−ル(indole)などの大腸菌からは、多くの代謝生成分が作られることが知られています。 セロトニン(serotonin)の前駆物質であるトリプトファン(tryptophan)は、食品からも摂ることができますが、主にこれらの代謝により生成されます。セロトニンは、腸の蠕動運動を刺激することが知られています。乳酸菌の増加に伴うpHの低下による嫌気性菌のタンパク質分解活性の増加は、神経認知症状と正の相関を持っています。また、胆汁酸の分解も生じており、脂肪の乳化が低下することで、脂肪分吸収不良に繋がります。


●Wikhelmina Behan (Glasgow, Scotland)は、現在進行中の研究、未知の病原機構による筋肉痛と運動不耐性に特徴付けられるものとしてのCFSに関する研究の最新の結果を発表しました。疲労は中枢系と抹消系に関する要素を持っています。そして、そのメカニズムは複雑ですが、MSなどの疾患の場合、運動後に筋肉中のクレアチンリン酸の再合成が大きく低下していることが知られています。この研究では、CFS患者だけではなく、MS、COPD、心不全患者も対象としています。
疲労に伴う筋肉内の化学的特徴には、相違が見られないことから、酸素や筋肉量の変化など、筋肉においては、これらの疾患に共通の問題があるものと考えられます。また、運動時の、脳から神経、筋肉、筋肉新陳代謝へ、肺から循環器、筋肉新陳代謝への伝達経路について触れ、CFSにおいては、これ全ての過程に異常があると考えられると述べています。エネルギーを瞬間的に使う”速筋”と持久時に使われる”遅筋”の2種類の筋繊維については、CFS患者では、特に、遅筋繊維が最大で20%少なくなっています。このことは、なぜすぐに疲労を感じるのかを説明する鍵になるだろうと述べています。CFSにおいて、調整障害は慢性的要因ではなく、別の要因が起こっていると考えられます。
筋肉に関する項目には、筋力低下、回復の遅れ、有酸素運動の低下、ミトコンドリア異常、新陳代謝異常などが含まれます。検査結果から、CFS患者はコントロールと比べて僅かに悪い程度ですが、CFS患者は全力を使い切ってしまっています。運動の24時間後、全てのCFS患者に筋力の低下が見られ、24時間後に最も大きく低下していました。再合成が遅く代謝が遅い事が原因であると思われます。このことは、段階的な運動は、効果が見込めないことを意味しています。CFS患者は、代謝物質を生成してはいるが、適切に使えていません。このことは、サプリメントも有効ではないだろうと考えられます。
また、安静時エネルギ−消費量(REE)の問題についてもふれています。おきている時には、エネルギ−の30%がイオン勾配の維持に使われていますが、運動不耐性のあるCFS患者ではREEが増加しています。このことは、サイトカイン異常や自律神経機能障害などに関係していると考えられます。
心血管系に関しては、運動により、最大血圧は変わらないまま、心拍数の低下が見られます。これは、迷走神経緊張の増加や内因性心筋効果によるものであると考えられ、自律神経機能は正常だろうと思われます。
CNS(中枢神経系)に関しては、SPECTとMRIを用いられており、神経内分泌研究からHPA系の異常が報告されています。医療ストレス(Medical stress) は、CNSに影響を与え、脳内ミクロ環境の変化や血液脳関門の透過性の増加を引き起こします。このことは、遺伝子発現の変化、すなわち神経伝達物質の生成に影響を与えていることを示しています。これら全てのことが、運動時の経路に悪影響を与えており、身体への重大な損傷によって、この全プロセスが、促進されているのだろうと思われます。


●Charlie Sargent (Adelaide SA)は、コントロールと比べ、運動強度と乳酸濃度の関係に差が見られないことを示しました。この結果は、CFS患者の乳酸の生産と分解は正常に行われていおり、初期疲労とこの研究で見られた体力の低下のどちらにも寄与していないことを示しています。患者は正常な身体状態にあり、CFSの治療に段階的運動を取り入れた方が良いという、生理学的根拠は見られていません。


●Adele McGrath (Adelaide SA)によって、CFSにおける心血管機能と認知機能に及ぼす急性起立性ストレスの影響について発表が行われた。被験者は患者10名とコントロール10名(healthy sedentary controls)の規模の小さい研究であるが、。総血液量と除脂肪体重は、正常な範囲内であった。そして以下の結論が得られている、短時間の起立ストレスでは体位性低血圧は生じない、急性起立ストレスによって認知機能は損われない。


●Garth Nicolson (Huntington Beach, California)は、CFS、FM、GWI(湾岸戦争症候群)における、複数のバクテリアやウイルスによる慢性感染の診断と治療について発表を行った。これらの疾患には重複する症状があり、これらの異常の主因は、ウイルスやバクテリアの慢性感染であると思われます。
この感染は、病因であるかもしれないし補助要因、または日和見感染であるかもしれない。次に、細胞内のバクテリアとウイルスに着目し、Forensic-PCRと遺伝子追跡を用いて研究を行った。その結果、CFS/FM患者の55%で、複数のマイコプラズマ感染が見られ、大多数の患者で複数種の感染が見られた。
これらのバクテリアは、GWIやALSなどの疾患においても85%の割合で観察されています。マイコプラズマ感染の有無に関わらず、患者の30%でHHV6の再活性化が見られました。また、C型肺炎が陽性である患者もいました。
マイコプラズマとC型肺炎患者に対しては、抗生物質(ドキシサイクリン、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン)の1週間のサイクルで6週間の複合投与と栄養補助の処方を行い、HHV6患者に対しては、免疫増強治療を行いました。回復状態を持続させるには6サイクルでは回復が遅く、また、マイコプラズマ感染患者には回復が見られなかった。
これらの感染症サブセットは、慢性感染であり、適切な治療を行っても回復は遅いだろうと結論しています。ワクチンの接種を含む、多種化学物質/細菌の暴露は、発症と関連があると考えられます。


●Kenny de Meirleir (Brussels, Belgium)により、CFSなどの疾患で障害が見られる可能性のある免疫経路に関する概要についての発表が行われました。発表では、CFSと慢性多発性硬化症(MS)(緩快と憎悪を繰り返すMSを除く)における単球2-50ASの活性化異常を示唆するデータが示されました。この異常は、RNaseLの活性化異常を招き、最終的にはRNaseLによるアポトーシスを妨げ、多くの複雑な生化学的/免疫学的異常を生じさせます。そして、Resultant-RNA断片は、PKRの活性化や低下を引き起こし、続いてリンパ球によるNOの放出(CFSで高率、MSで低率)が生じ、イオンチャンネル、NK細胞の機能、COX2活性化、脳内の活性T細胞によるグルタミン放出に影響を与えます。そして、CFSと慢性MSは、このような2-5A/RNaseL/PKR経路に並んでいる障害連鎖の両極端な場合であることをこの結果は示唆していると結論しています。


●Dharam Ablashi (Washington, USA)は、CFS患者におけるHHV6の活性化と低分子RNaseL蛋白質との関係について発表を行いました。この研究では、37KDa蛋白質の存在とHHV6の関係を明らかにすることを目的に、血漿、脳脊髄液、白血球中のHHV6の検査が行なわれました。その結果、CFS患者被験者の65%(35名)で変異形HHV6IgM抗体とHHV6系PBMC群をともなうHHV6の活性化が見られました。また、患者の26.7%からHHV6遺伝子が検出されました。また、NestedPCRにより、34%の患者の血漿からHHV6が検出されました。TaqManPCRでは、血漿:48.5%、脳脊髄液:40%が陽性を示したことから、TaqManPCRは、これらの血清に対して、NestedPCRよりも感度が高いと考えられます。TaqManPCRにより、陽性を示した患者のほぼすべてがHHV6のA型であることが明らかになりました。A型は成人期に感染し、B型は幼年期に感染する傾向があります。続いて、70%のPMBCサンプルについて、高分子(80KDa)と低分子蛋白質の比率の測定を行いました。その比が4以上である場合、HHV6との相関は有意と考えられますが、IgM抗体とPCRの相関は、見られませんでした。


●Kenny de Meirleirらは、マイコプラズマ感染と2-5A/RNaseL経路の間に共通の生理病理学的メカニズムがあるのではないかと考え、両者の関連について検討をおこないました。抗生物質服用歴のない患者182名(多くが女性)を被験者としました。その結果、両者に有意な相関が見られ、マイコプラズマは、免疫システムを構成しているいくつかの要素を刺激していることが示されました。それらは、Polyclonal-T細胞とB細胞を活性化させ、単球は、80KDa-RNaseLを切断するエラスタ-ゼを生産し、抗ウイルス経路の障害を引き起こします。そして、低分子RNaseLは、感染感受性や細胞内の抗原を取り除く能力の抑制と関連のあるTh1活性の低下を引き起こすことが示唆されました。


●Wilhelmina Behanは、CFSでは抗ウイルス遺伝子発現の増加が見られないという、これまでと大きく異なる結果を発表しました。これまでは、2種類のインタ-フェロン誘起抗ウイルス経路(2-5A/RNaseLとPKR)が活性していると考えられていました。しかし、これらの初期の研究では、既知のウイルス性疾患の患者との比較が行われていませんでした。CFS患者22名、重い胃腸炎にかかっている方10名、コントロール21名の被験者を用い、4つの遺伝子のmRNAの発現、RT-PCRを用いたPBMCsにより評価を行いました。CFS患者と健康なコントロール群の間には、これら遺伝子については、有意な差が見られませんでした。しかし、感染症を持つ患者は、両経路の活性化が見られ、PKRに対する遺伝子発現は、コントロール群に比べ9.6増加しており、阻害物質RLIは、そのほかの2群と比べて17倍となっていました。これら経路の僅かな上方調節は、ウイルス感染後、数ヶ月間続くことがあります。したがって、CFS患者にみられた変化は、初期の感染に伴なうもので、それが長期にわたり続いているのかもしれません。急性感染による患者グル-プが含まれている場合には、CFSにおけるこれらの変化は、あまり重要ではなく、したがって、抗ウイルス活性は、CFSに対する合理的基本検査に用いることはできません。


●Mohamed Abou-Donia (N Carolina, USA)は、ストレスに着目し、ピリドスチグミン、DEET、ペニシリンをラットに複合投与(低用量、毎日服用)した場合について検討を行い、血液脳関門(BBB)の混乱、脳内に神経化学的、神経病理学的変化が生じることを報告しました。この研究は、湾岸戦争従軍兵士が浴びた化学物質を対象とし、それらに日常的に曝された場合を想定したもので、コントロール群との比較も行われました。ストレスのみ、または化学物質のみを与えた動物には、体重、ヨウ化ヘキサメトニウ(hexamethonium iodide)の脳内への取り込み、脳アセチルコリンエステラ−ゼ(AChE)、プラズマコリンエステラ-ゼ(plasma cholinesterase)に変化は見られず、血液脳関門透過率はわずかな増加にとどまりました。また、m2-ムスカリンアセチルコリン受容体のリガンド結合(m2-muscarinic Ach receptor ligand binding)に減少が見られました。これらのグル-プには、微細神経細胞死は見られませんでした。
しかし、化学物質とストレスの両者に曝された動物には、血液脳関門透過率の劇的な増加、脳アセチルコリンエステラ-ゼ活性の大幅な減少、m2-ムスカリンアセチルコリン受容体リガンド結合の減少、神経細胞死の大幅な減少が見られました。また、肝臓には、組織学的変化が観察され、両者に曝された場合に特に重篤な変化が見られることが明らかとなりました。この研究結果は、ストレスと低用量のこれらの化学物質暴露が重複した場合、大きな危険性があることを示しています。そして、血液脳関門から漏出が起こることで、毒や感染などの攻撃に対して弱くなると考えられます。


●Kaye Kilburn (S California, USA)により、化学物質暴露による脳障害の客観的データ解析に関する発表が行なわれました。発表では、身体反応(バランス、反応時間、視野など)、心理的反応(問題解決能力、回想力、記憶力など)、感情や気分(抑うつ、不安など)、症状(頭痛、睡眠障害など)の脳機能に関連する4種類の反応について説明され、次に、脳機能評価のための身体検査8種、心理検査11種の説明がなされました。これらの検査は、化学物質に曝された方々に対して、有効な検査法です。そして、実際の適用例についての説明があり、最後にコンピュ−タ−を用いた評価プログラムの実演が行われました。


●Nicole Phillips (Armadale, Vic、元CFS患者、精神科医)により、これまでの精神科医のこの病気への取り組み方法に対する懸念、悪い患者、悪い研究者、CFSと互換性のある神経衰弱症と身体化という用語の使用法に焦点を当てた発表が行われました。まず、この2つの用語の定義について説明が行われ、次に、初期に神経衰弱症がどれだけ身体的疾患であると考えられていたか、また、長い間精神科医によって神経衰弱症が心理的障害として誤った扱われかたをされてきたのか、身体的原因である症状を持つ患者に心理的障害が見られる場合、身体化障害と互換性があることなどが指摘されました。生物学的異常を否定する傾向は、CFS患者にとって非常に悪い影響を及ぼします。そして、最後に、精神科医がこの複雑な器質性疾患についてさらに学習する必要性が強く指摘されました。


●Ellie Stein (Calgary, Canada)により、抑うつ、不安などの精神的障害とCFSを区別するための、有益な知見についての発表が行われました。これらは、すべて疲労症状を呈し、臨床上も重複している部分があります。しかし、CFSの発症よりも前に精神的症状が生じていた場合、CFSが原因となる生活の質や健康の悪化などをも包含した、より一般的な症状である場合や、治療を行うことができないほどに症状が深刻である場合などにおいてのみ、重複する精神的障害を考慮すべきだと考えられます。そして、不安や抑うつの治療を行う場合には、CFS患者は薬物に対して過敏であることを念頭に置かなければなりません。SSRI、睡眠障害の治療、認知行動療法(CBT)などが有効な治療法となるでしょう。


●Kenny de Meirleir (Brussels, Belgium)により、病態生理学的メカニズムとCFSに関する発表が行われました。この疾患には、単独の病因は見られませんが、しかし、免疫システム異常を導く誘引が多く見られ、ウイルスの再活性化や日和見感染が増加しています。病理的に切断されたRnaseLの断片である合成アンキリンは、ABC輸送物質と作用し、機能障害を起こし、CFSの多くの症状を引き起こします。これは後天的伝達経路障害(acquired channelopathy)と呼ばれます。CFS患者被験者206名中70名で、マイコプラズマが陽性であり、これらの患者達には、明らかに多くのRNaseL断片が見られました。また、Bijlmer事故についても触れ、この飛行機事故の後、マイコプラズマ感染が67%に見られ、CFS様症状が生じたと述べられました。


●Rey Casse (Adelaide SA) は、SPECTscansを用いてCFS患者の局所脳血流量の測定を行ないました。そして、測定には、正確性と信頼性の点から、三頭カメラが良いと述べています。CFS患者13名と異なる疾患を持つ11名の結果を比較したところ、側頭部における局所脳血流量の低下が7名のCFS患者に見られ、3名に低下の疑いがあることがわかりました。局所的低下の度合いとその位置とを示すのに適していることから、統計パラメータ分布図(Statistical Parametric Mapping)を用いた結果、多くの場合、脳幹(brainstem)、側頭葉(temporal lobes)、前頭葉(frontal lobe)、前側帯状回(anterior cingulate gyrus)に低下が見られることがわかりました。


●Robyn Cosford (Mona Vale NSW)は、共に、神経免疫障害や胃腸障害がに見られているという点で、自閉症とCFSは、同じスペクトラムを持つ疾患であると述べています。また、尿中のアミノ酸と有機酸量において、同じ傾向がこれら全ての疾患に典型的に見られています。さらに、血漿脂質分析や排出物中のバクテリア研究からも、いくつかの類似点が見られています。代謝について通常5種類に分類されるCFS患者群に比べ、自閉症の子供達は、代謝上、より均一性が高いと述べています。しかし、神経認知症状とGI症状を持つCFS患者サブグループでは、自閉症患者群と似たパタ−ンを持っており、このことは病因論上の共通性があることを示しています。自閉症の子供達の多くは、感染症にかかりやすく、特に診断の前に中耳炎にかかっている例が多く見られています。


●Gregg Robinson (Newcastle NSW)により、視覚障害を持つCFS患者における生化学的異常に関する発表が行われました。CFS患者群には、Irlen症候群(IS)と呼ばれる視覚障害を持つ失読症患者と同様の生化学的異常があることが報告されており、これら2つの疾患には、同じ視覚症状(頭痛、輝所恐怖症、集中力の低下)が見られています。また、高い割合で視覚化過程の障害が見られていることから、遺伝的脆弱性とも考えられます。バクテリア脂肪酸のC17:0は、眼精疲労と正の相関があり、病原体の存在を示している可能性もあります。このことは、同様にCFS患者においても、見つかっています。


●Greg Tooley (Burwood, Vic)により、サーカディアンリズム障害がCFSの発症、病因となる可能性に関する発表が行われました。まず、時差ぼけや交代勤務により生じる症状との症候学上の共通点について述べられ、CFSにおける睡眠活動、深部体温、メラトニン分泌の一日のプロファイルに関する3件の研究結果について説明されました。CFS患者の睡眠活動サイクルは、コントロール群と比較して、明らかに位相が遅れており、その結果、睡眠障害を招き、健康への影響が見られました。睡眠−覚醒、深部体温、メラトニン分泌の周期が、CFS群ではうまく調和して働いていないことから、CFSは、体内、外部のサーカディアンリズムの非同期性と関連があると考えられます。


●Neil McGregor (Newcastle NSW)は、CFSの発症−経過過程のモデルを作るのに有効な過去から現在までのデータに関する総括を行いました。因子分析法を用いた結果、CFSには、4つの症状群(一般的なCFS症状、神経−認知症状、筋骨格系症状、気分変化)があることがわかりました。一般的な症状には、ウイルスの再活性化、RnaseL断片の増加、感染症症状群が含まれています。このグル−プには、サイトカイン誘起症状や病原体と関連した多くの症状が見られ、また、他のグル−プでは、宿主反応やサイトカイン性の症状が見られています。種々のウイルスの再活性化と症状の変化には関連があり、合併感染症は、患者の罹患率を増加させています。疼痛は、代謝排泄物と関係があり、サイトカインにより体組織からの代謝生成物の排出が促進されています。そして、アミノ酸の低下に伴い、脂肪酸が増加し、患者はより過敏に反応するようになります。


●Tania Emms (Newscastle NSW)により、CFSと重複する食物アレルギ−に関する発表が行われました。食物アレルギ−は、IgEが増加しない非免疫機構によるものです。食物アレルギ−は、最大で30%のCFS患者見られている重要な因子です。不耐性の原因となる化学物質は、蓄積し、そしてその人の許容量を越えると、数時間、数日遅れて、多くの症状が生じてきます。現在、患者の食事から食品を除去したり、加えたりする研究が行われており、食品を除去した結果、90%の患者で、多くの症状が改善するなどの良い結果が得られています。特に腸症状の減少が観察されています。したがって、食事アレルギ−は、CFSにおけるIBS症状の発症に関して、病因論上重要であると考えられます。結論として、食物アレルギ−に対する注意など、症状管理は、あまり行われていませんが、有効な方法であると考えられます。


●Ruud Vermeulen (Amsterdam, Netherlands) は、150名のCFS患者に対してLカルニチン1mgを6ヶ月経口投与した結果について発表しました。その結果、69%で疲労、疼痛、認知機能の改善が見られました。また、より服用量を増やした場合の研究も行われましたが、効果的であるとは言いがたい結果となりました。しかし、全ての患者で、大きな改善が見られ、血漿Freeカルニチンレベルは、症状の改善と正の相関が見られました。また、最大52%の患者で、治療中止後に症状の悪化が見られました。カルニチンは、全ての細胞で使われており、特に精子細胞において濃度が高く、脂肪酸と炭水化物の代謝に必要で、血管を低酸素症から守る働きがあることなどが知られています。


●Neville Millen (Deakin, Vic)は、CFSが社会生活に及ぼす影響について発表を行いました。ME/CFS患者、医療、政府の間のこれまでの50年にわたる緊張関係は、無数の問題や遺恨を残していると指摘し、医療関係者は、現在の科学的根拠に基づく医療だけでを考えるのではなく、より人間的で総合的な治療モデルを取り入れる必要があると述べています。そして、政府に対しては、研究資金提供の促進、福祉や疾病手当て申請の簡便化、CFS患者の権利に対するさらなる配慮などを行う必要があると指摘しています。


●Pascale de Becker (Brussels, Belgium)により、CFSへのAcclydineの使用に関する発表が行われました。Acclydineは、植物性アルカロイドで、蛋白質の構造や代謝に影響を与えます。特に、成長ホルモンの放出を増加させ、下垂体の活性化を促します。そして、CFSではこのGH系に障害があることが知られているため、アルカロイドは、CFSに有効ではないかと期待されます。90名の被験者に対し、Acclydine250mg qidを4週間投与し、その後Acclydine250mg bid4週間の投与を行いました。治療を行った群では、54%に症状の改善、IGF-1の増加が見られ、大きな効果が得られました。主要な副作用は見られませんでした。したがって、これはCFSに対して安全で有効な薬であると考えられます。


●Dorothy Morrisは、特に認知機能障害との関連について、教育の観点から問題点を指摘しました。患者の障害の観点から、オ−ストラリアの3次医療施設において、CFSの症状である認知機能障害を持つ方々がどの程度治療機会が与えられているかについて調査が行われ、その結果、本疾患を持つ方々を助けようとする試みはなされていないことが明らかとなりました。しかし、3次医療施設では、疲労に対する設備がありることから、CFS患者の立場から評価や決定ができる三次医療機関関係者の不足が原因であると考えられます。


●Nigel Speight (Durham, UK)は、これまでの10年間にイギリスで診察した児童虐待経験のある小児ME/CFSの14症例について発表を行いました。これらの症例は、氷山の一角であり、まだその危険性のある家族が多く存在する可能性が指摘されました。14例のうちの13例で、訴訟は棄却されましたが、少年の一例だけ、現在でも精神科治療を受けており、治療開始から7ヶ月になります。両親がネグレクトの疑いがあると指摘されている場合に、より危険性が高く、例えば、片親、子供が更生に失敗した場合、両親との対立などがあげられます。そして、その結果、多くの子供達は、両親が自分達を守ってくれなかったと感じ、専門家や親に対する信頼を失ってしまいます。これらの子供達は、その多くが心的外傷後ストレス障害を発症します。


●重篤なCFSを持つ娘の父親は、心が痛む悪夢のような経験について発表を行いました。彼らの娘は、拒食症患者と共に受けたリハビリテーションに何の反応も示さず、屈辱感と脅迫感にさらされていました。リハビリテーションは、彼女が”本当”の病気ではないと考えられていることを意味していましたが、彼女は病気が重く何もしゃべることができなかったのです。そして、両親が彼女のかわりになにかをしようとすると、治療の邪魔をしていると責められ、さらに、児童福祉機関からの警告も受けました。それは、こういった介護、そして知識のある両親は、子供の介護にはふさわしくないと彼らが考えていることを意味していました。また、この両親は、医療関係者から多くの虐待を受けたと感じていました。


●Simon Molesworth (Hampton, Vic)は、世界の多くのME/CFS患者が満足な治療をうけていないとの結果について発表を行いました。そして、深刻な社会的、道徳的、法的な問題が明らかにされました。現在、CFSについて生物物理学的、神経学的に明確な知見が数多く得られており、現在の精神科的療法から、他の療法へと治療法を改める必要があります。医師は、この病気の身体的特徴を認める必要があります。そして、お互いの理解を確認しながら治療方針を決めるため、責任と義務を分担して行くために、病気の変化に注意し、経過を観察してゆくことが必要です。患者と医療関係者は、良い協力関係を築き、回復への過程を共に進んでゆかなければなりません。


●Robyn Cosford( Mona Vale NSW)により2件の症例が発表されました。通常の検査に加え、尿の有機酸値の検査、便検査および腸の浸透性試験をおこなった結果、微小繊維および非微小繊維の異化作用、TCAサイクルの機能障害、消化管内細菌の異常、腸の浸透性の増加といった異常が両被験者に見られました。そして、生活習慣の改善、カウンセリング、瞑想、適切な運動と食事指導に基づいた治療が行われました。小麦、乳製品、食品添加物およびアレルギー起こす食品を避け、検査結果に基づき、ビタミンB6、マグネシウム、主要脂肪酸などのビタミンとミネラルを含むサプリメントを投与しました。また、数種の「天然」かつ規定量の抗生物質を用いた結果、両被験者に1年から5年で明らかな症状の改善がみられました。


●Richard Schloeffel(Gordon NSW)もまた、2件の症例の発表をおこないました。一例目の被験者は、CFSと診断され、クラミジア肺炎のPCR陽性、IgGおよびIgA抗体の陽性反応を示していました。doxycycline、Nilstat、生菌製剤、ミネラル剤、ビタミン剤による治療を2年間おこなった結果、患者(女性)は、完全に回復し通常の生活を送っています。二例目の被験者は、多くの症状があり病状はもっと複雑で、また、CDCによるCFSの定義を満たしていました。被験者は、毎日、40回にも及ぶ下痢に苦しんでおり、Mycoplasma fermentensは、PCR陽性を示していました。また、以前に甲状腺を摘除を受けており、その後甲状腺機能低下症を発症していました。前例と同じ治療法に加え、tetroxin、thyroxineを加えた治療を行ない、大腸菌数が少なかったため、13人のドナーの便から採取したバクテリアを直腸から注入しました。その後、40年間、腸の機能は正常で、症状はまったくみられていません。


●Richard Burnet (Adelaide, SA)により、大脳血流低下の問題について発表がおこなわれました。16人のCFS患者に対し、ヒドララジン25mgを一日に2〜4回(最初は毎日錠剤を飲むことから始め、徐々に量を増やしていく)、多目の塩分、一日3リットルの水分、カリウムとマグネシウムのサプリメントを組み合わせた治療を行いました。被験者のうち10人は、症状が大きく改善されましたが、3人には変化が見られず、残り3人は副作用のため治療を中止しました。


●Dan Peterson (USA)は、免疫変調療法について発表を行いました。まず、この療法に用いられる免疫モデルの説明が行われ、アンプリジェンには異常経路を是正する働きがあること、アンプリジェンは、非常に安全な薬剤であり、大きな副作用もなければ、死亡例も見られないことが説明されました。現在、320人の患者に対する二重盲式試験の第3相にあり、アンプリジェンは、第3相のCFSに用いられている唯一の薬剤です。また、40人の重症患者に対する小規模第3相オープンラベル試験も進行中です。さらに、HHV6陽性患者への抗ウィルス剤投与などの、既存の治療法に関しても触れ、経口投与はあまり効果的ではないが、静脈投与は非常に有効であると述べられました。また、米国内の薬局で入手できるトランスファーファクター(訳者注:商品名)もHHV6患者にある程度の効果があることが分かりました。また、興奮剤モダフィニルは、MSと線維筋痛症の疲労改善に著しい効果が見られました。


●Rosamund Vallings (Auckland NZ)からは、CFSの治療技術に関し、費用と時間を有効に使うための一つの取り組みとして集団療法が提案されました。集団療法のセッションを実施する中でこれまでに生じた問題が説明され、いくつかの適切なプログラムが提示されました。ニュージーランドでは、教育的要素がある限り、CFSに関するこのような治療はすべて政府資金で賄われます。そして、患者達はこの取り組みに積極的で、対処能力の向上や自身の病気に対する正しい知識の習得がなされています。


●Kenny de Meirleir (Brussels,Belgium)は、症状管理手法について発表を行いました。それは、免疫系の拮抗の回復、微生物の消滅/減少、ホルモンバランスの回復を目的としているものです。アンプリジェン(160名の患者に投与)、抗生物質、イソプリノシン(Isoprinosine)を用いています。




口頭発表に対する詳細説明のためのものを含む、10件のポスター発表がありました。


●Wilhelmina Behan (Glasgow, Scotland)は、軽い運動を行ったときの心拍出量の測定から、CFSではエクササイズ中に心血管障害が見られるとの予備的な結果に関する発表を行いました。


●Pascale de Becker (Brussels, Belgium)は、CFSの病因に関する所属する医局で得た知見について概略を発表しました。その結果によると、上気道感染は、発症の前に最もよく見られ、種々のストレス因子やその後に生じる免疫学的、神経内分泌学的変化がCFSの発症に寄与していると考えられます。また、同氏は、RNaseL抗ウイルス経路異常によって生じたと考えられるCFS患者のサブグループにおけるChannelopathyの知見についてのポスター発表やベルギーのCFS患者におけるマイコプラズマ感染率に関するポスター発表も行なっています。272名の患者の68.7%にマイコプラズマが見られ、M.hominisが最も多く、次に M.pneumoniaeが多く見られました。また、17.3%に複数感染が見られました。


●Tania Emms (Newcastle NSW)は、セリンのCFS症状管理の可能性について発表を行いました。一日1.3gm のL-serineの服用を3ヶ月間行った結果、28名の患者で症状が大きく軽快したことから、二重盲検プラセボ試験を行う予定であると述べています。


●Ann Harvey (Wellington NZ)は、CFS患者におけるコルチゾールレベルに関して、メタ解析を行いました。3次医療の患者は、内分泌系異常の割合が多く、評価過程において臨床手法が重要であることを示しました。


●Lawrence Klapow (California,USA)は、慢性的な回虫の寄生の可能性について発表を行いました。30名のCFS患者のうち63%の痰から回虫(cryptostrongylus pulmoni)か見つかっています。


●C.H.Little (Mt Waverley, Vic) は、CFS患者によくみられる食物に対する悪い反応の基礎であろう、別個の免疫物質(T細胞抗原binding molecules)の特定に関する発表を行いました。


●P Clifton Bligh et al (NSW)は、CFS患者に見られる尿のコハク酸の減少は、エネルギ−調節障害やタンパク質合成と関係があり、サイトカイン性窒素酸化物による化学反応の変化が生じていることを示唆していると報告しています。また、これらの変化は、疲労度と関係していることが示されました。


●獣医外科医W. Tarello (Perugia, Italy)は、Dubaiでアメリカ産の馬のCFSについて発表を行いました。その馬は、カリウム亜ヒ酸塩の点滴により、良好な回復をとげました。





Peter del Fante (Adelaide SA)は、会議の総括として、診断基準改定の必要はあるが、CFSは正当な病気であり、特に、患者たちは、単に体調が悪いだけではないことを認識しなければいけないと述べました。また、開業医に対しては、良い患者教育、患者への支援的治療、前向きな診断を行う必要があると述べました。医師は、倫理的な境界線を守り、患者を擁護し、研究者達と協力して行く必要があります。国の患者記録への登録、CFSを届出義務のある疾患とすることなどは、将来、考えなければいけない問題です。


Richard Burmetにより、「CFSにおいて、脳、辺縁系、腸は、感染、素因、種々の発症因子と関連している」という点が会議の合意事項として確認されました。


最後に、Tim Roberts (Newcastle NSW)は、以前はオ−ストラリアでは見られなかったボレリアやEhlichia種のような新しい微生物に注意することの重要性を強調し、Christine HunterとEllie Steinに、会議開催への多大な努力とその熱意に対して感謝の意を表しました。



翻訳:Co-Cure-Japan, Y.A.




Copyright © 2003 Co-Cure-Japan
ご意見/ご感想はこちらまで。
Please report any problems with this page to the Webmaster.

inserted by FC2 system