ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)と慢性疲労症候群

Jill McLaughlin

Mail Magazine ME/CFS Information, No.66, 2003.1.19


サイト:http://listserv.nodak.edu/scripts/wa.exe?A2=ind0203a&L=co-cure&F=&S=&P=268
原題:Human Herpesvirus 6 (HHV-6) and Chronic Fatigue Syndrome
著者:Jill McLaughlin



ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)は、既に知られている8種のヒトヘルペスウイルス属の1つです。このウイルスは、1986年にNCIで発見されており、免疫および中枢神経系の細胞に感染します。

HHV6による感染に対して免疫反応を示す抗体について、陽性を示す人は、世界人口の95%を超えることが血清検査により明らかにされています。初期感染後、HHV6のDNAは、血液および他の体内組織の細胞核内に潜伏します。

HHV6には、HHV6AおよびHHV6Bの2種類の亜型があることが確認されています。HHV6Bの一次感染により小児バラ疹が発現します。このウイルスに感染した人のうち、この型に対する抗体を有する人は95%を超えています。HHV6Aは、小児後期または成人期に一次感染すると考えられており、感染しても症状がみられない場合があります。このA型は、病原性が高く、脳および免疫機構を侵すことが知られています。また、HHV6Aの感染率については、明らかになっていません。

成人期にHHV6Aが再活性化することで疾患が発現する可能性があります。通常、免疫機構によって再活性化が抑制されていますが、このウイルスは潜在し再活性化します。成人期における再活性化は、単球増加症候群、自己免疫疾患および神経系疾患、特に、MS、AIDSおよびCFSと関連があると考えられています。

疾患(AIDS)または薬物療法(化学療法または免疫抑制薬)によって免疫力が低下している患者では、HHV6の再活性化によって、骨髄機能の抑制または炎症が起こり、また脳、肝臓あるいは肺などの組織に損傷が生じる可能性があります。

MS患者(54%陽性)およびCFS患者(39%陽性)から単回で無作為に採取した血液サンプルを用いた試験結果から、これらの患者でHHV6の活性化が見られています。また、再度、陰性であった患者から血液を採取し、検査を行ったところ、24%の患者で陽性を示しました。したがって、この研究では、平均して50%の患者が陽性を示したことになります。これらの結果は、ウイルス量が時間と共に変化し、HHV6感染の活性化は間欠的であることを示唆しています。

健常者対照群ではHHV6の活性化については陰性だったことから、HHV6感染の活性化は異常であり、疾患と関連のない健常者では見出すことはできませんでした。

Dr.Ablashiは、患者から採取したHHV6の70%は、B型に比べて神経向性の強いA型であると報告しています。また、CFS患者の脳脊髄液(Cerebrospinal fluid:CSF)からHHV6DNAが見つかっており、脳脊髄液から臍帯血細胞に感染する可能性があることを指摘しています。そして、HHV6は、CFS患者の神経学的徴候の原因であろうと結論付けています。

さらに、リンパ疾患、血球疾患および自己免疫疾患の広範囲スペクトルがみられますが、これらの疾患はHHV6の滴定濃度が上昇することにより発現し、こうした患者から複製されたウイルスが検出されています。これらの疾患には、異型ポリクローナルリンパ増殖性疾患(atypical polyclonal lymphoproliferation)、ホジキン病(Hodgkin's disease)、CFSおよび全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosis)があります。

CDCの所見に反して、HHV6によってCFSにみられる多くの臨床症状を説明することができます。KnoxとCartriganによると、CDC検査に伴う問題は、血清サンプル、リンパ球および3種のPCR法を用いて患者および対照群の両群を検査したことであると指摘されています。こうした方法はHHV6の感染が活性化していることを検知するには適切ではありません。

HHV6は、脳および脊髄へ頻繁に感染することとあわせて、炎症性サイトカインの高レベル産生を誘導する能力、およびあらゆる型のリンパ球(NK細胞を含む:NK細胞はCFS患者でその機能が低下していることが知られている)に感染し破壊する能力などを持つことから、CFSを特徴づける幅広い臨床的異常を説明することができると考えられます。

こうした感染が原因であるかどうかは不明ですが、多くの研究から、持続的なウイルスの活性化は、症状の慢性化に何らかの役割を果たしていることが示唆されています。このことは、現在有用であるとされている抗生物質がCFSの治療に有効であるかもしれないという可能性があるという点で、良いニュースです。今後、抗生物質に関する長期研究を行い、この疾患の病因としてHHV6感染がどのような役割をしているかを正確に決定づけることが必要だと思われます。


Jill McLaughlin
Executive Director
National CFIDS Foundation, Inc.
Needham, MA 02492


参考文献

Salahuddin, SZ et al. Isolation of a new virus, HBLV, in patients with lynphoproliferative disorders. Science 1986; 234: 596-601

Ablashi D., et al. Human Herpesvirus 6 strain groups; A nomenclature. Arch Virology 1993; 129: 363-366

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Knox KK, Brewer JH and Carrigan DR, Persistent active HHV-6 infections in patients with CFS. Fourth International AACFS Conference. Boston, MA. October, 1998.

Ablashi D, Testing and clinical manifestation of HHV-6 in CFS. Fifth International AACFS Conference. Seattle, Washington, 2001

Reeves WC, et al, Human herpesvirus 6 and 7 in chronic fatigue syndrome: A case-control study. Clinical Infectious Disease 2000;31:48-52.



翻訳:Jp-Care




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