子供のCFSは見過ごされてしまうのか
Rebecca C. Moore and Frank Albrecht, Ph.D, 1996.1
このテキストを教育関係または非営利活動のために用いるには、Rebecca MooreとFrank Albrechtの許可が必要です。
小児科医、他の開業医、また、専門家であっても、子供のCFS(またはCFIDS)を誤診してしまう場合があります。さらに、両親も症状を誤解してしまうことがあります。ここでは、なぜそのようなことが起こるのかを説明したいと思います。 それにより、家族や医師達の誤解を避けることができればと願っています。
また、13歳ごろから、低血圧症(Neurally mediated hypotension: NMH)やその類似疾患で苦しんでいます。1年半もの病態が深刻な時期を迎えるまで、彼女は、CFSと正確には診断されていませんでした。さらに、最近になってようやく、心臓病医から、彼女が10代前半に経験した症状は、NMHの特徴を示していると告げられました。現在、彼女は、アメリカCFIDS協会(CFIDS Association of America)の委員、CFIDSAAの青少年支援委員会(YAC)の議長を勤めています。また、YACニュースレター「Youth Allied by CFIDS(CFIDSで結ばれた子供達)」の編集委員でもあります。 Frank Albrechtの13歳になる娘は、NMHに罹り、併せてCFSの症状も訴えています。彼女は、11歳のころからそれらの症状を示していましたが、13歳になる一ヶ月前まで、正確にはそう診断されていませんでした。Frankは、Johns Hopkins大学で心理学博士号をとり、現在、心理カウンセラーをしています。「おかあさん、いつも、ものすごく疲れた感じがするの。それに、体のあちこちが痛いし。うまく頭で考えられない感じがするし。なんか怖いの。」
しかし、CFSの可能性など考えもつかなかったことと思います。事実、その病名すら聞いたことが無かったでしょうし、子供達が罹る可能性があることも知らなかっただろうと思います。
この少女は、常に疲労感を持っており、それはときどき学校にも行けなくなるほどでした。 学校に行っても、ボーっとしてばかりで、前よりも記憶力が低下しているようでした。 また、様々な部位の痛みを訴えており、喉は常に腫れているようでした。本当にかわいそうな状況でした。さらに、母親は、怠けている、忘れっぽい、学校を休みすぎるなどと、彼女に口うるさく言うので、彼女はいつもいらいらしていました。Frankは、母親が言うように、彼女をうつ病と診断し、治療を始めました。彼女は少し良くなり、もっと頑張るようになりました。体調が悪くても、頑張って前よりたくさん学校に行くようになりました。母親も彼女を元気付けようと頑張りました。これは何よりの支えになりました。しかし、Frankは、一時的に回復したといっても予想した効果とは程遠いものだと感じていました。 それから2年程経ったある日、母親はFrankに電話をかけてきました。 この時には、二人共、CFSのことをよく知っていました。 「私はCFSじゃないかと思うんですが」と彼女は言い、医師を紹介してほしいと尋ねてきたのです。 その時、Frankは突然、「彼女はもちろんCFSだけれども、彼女の娘もCFSだったんだ」と気付きました。母親は、そう言われると呆然としているようでした。自分自身の病気には気付いていましたが、 娘もそうだとは思ってもみなかったのです。
症状が重くなったり軽快したりするこの病気の流れが組み合わさった、多様な症状とその程度の変化は、小児科医が考えている「CFS」とは異なっているのかもしれません。 その症状は普通なのか変なのか、それを言わないほうが良いか、言ったほうが良いかという判断は、多くの場合、子供自身が行っています。子供達は、症状を訴えることで罪の意識を感じることがあります。また、それを言わずに我慢しているときでも、そう感じることもあります。その結果、子供は何も言わないため、「どこか悪そうだけれども、どうしたんだろう?」という両親の疑問だけが残って行くのです。そういう子供達と生活している大人達に、「家族のかなでX, Y, Zという症状をお持ちの方はいますか?」と尋ねても、「いいえ」と答えるだけでしょう。なぜなら、子供達が訴えなければいけないと思うほど、それらの症状が重くなっていないからです。
複雑で混乱した様相を示す症状は、情緒の問題とされています。医師は、それを元にして子供 達を診察することになります。このことは子供のCFSを見分けるための障害となっています。
下、学校の成績の低下、痛み、そのほかの症状があっても、そういう子供なのだということで理解 されてしまうでしょう。しかし、そのような子供達の中には、明らかに記憶力の低い子供もいます。 さらに起こりやすいのは、変化があることが分かっていても、そういう年頃なんだとか、青年期神経 痛、または単に思春期だから、などと合理的でない解釈が与えられてしまうことです。
3. もう一つの要因は、病気が何年も続いてからでないと、子供達がCDCのクライテリアに適合しない ということです。CFSは、大人と子供で異なる症状の現れ方をする病気の一つ(その他の例として は、気分変調症がある)であるのに、医学界ではいまだそれを認識していません。
目上の大人達(両親,祖父母,先生,医師)みんなから、怠け者、無関心、問題を誇張しているといわれ、それでも、「分かってないよ。これを説明してみてよ。」と、冷静に言うことができる子供はほとんどいないでしょう。大人達(医師も含まれる)は、子供が言うことに真剣に耳を傾けないことがあります。子供達自身は、信じてくれない大人達に立ち向かうだけの自立性や自己主張する力を持っていません。それは大人であっても難しいことです。 子供達は、そう診断されるまで、病気であることを認めないでしょう。 場合によっては、診断を受けたとしてもそれを否定することもあります。 でも、まだ心の中では、恥ずかしがり屋だからとか知力が無いからと思っているかもしれません。12,13歳の子供達は、自分のことと友達のことに多くの関心が向くため、症状を社会性が足りないというサインであると考える傾向があります。みんなと違うことは受け入れられないのです。 だから、友達が同じような疲労感や痛みを訴えていないのであれば、自分の症状を上手く隠したり、まったく症状が無いのように振舞わないといけないと思うのです。 いずれにしても、症状を表に現すよりも、隠していたほうが「良い」、「かっこいい」と思っているのです。
それができるのは、知性があり、収入が多く、自分に強い自信を持っている人達だけです。 ほとんどの子供達は、医師を尊敬しなさい、口ごたえをしてはいけませんと教えられています。 そのため、多くの子供達が、医師を怖がっています。CFSに罹っている子供達は、医師から、やさしく諭すような口調で、どこも悪くないと告げられます。 また、大げさすぎる、もっと頑張らなきゃだめだ、責任を逃れようとしていると言われます。子供達は、医師にそう言われても、迷惑をかけてしまうかもしれない、嫌われてしまうかもしれない、もう診てもらえなくなるかもしれない、ということが心配で、そうじゃないんだと言い返すことができません。そういう子供達は、病気は良くなっているんだと、自分自身に言い聞かせ、そう思い込んだりします。 また、子供達は、嘘をついてでも、否定されないように医師が望むことを言うようになります。
医師が間違っていると強く感じたときでも、一般に、そう言ったり、行動を起こしたりはしません。 疑わしい専門家や非協力的な保険会社に対するには、自分に自信を持つことだけではなく、 多くの社会的経験が必要となりますが、ほとんどの場合それらが不足しているのです。
1. 両親がCFSのことを良く知らない、子供達がそうであることを疑わない。
2. CFSの初期症状は、情緒障害、適応障害と誤った診断をされることがあり、そこから先への 道を閉ざしてしまう。
3. 子供達は、病気の症状を、良くないこと、恥ずかしいこと、みんなより劣っている証拠である と考えてしまい、症状を正確に伝えていないことがあります。
4. 子供達の場合、大人に比べて、症状がゆっくりと始まることが多く、病気による機能低下 が、子供にも回りの大人にも、普通のことであると思われてしまうことがあります。
5. 最初の数ヶ月、または数年間、小児CFSは、CDCによるCFSのクライテリアに当てはまらな いことがあります。従って、初期の段階で医師はCFSである可能性を捨ててしまい、もう一 度疑われることが困難になります。
6. 多くの小児科医、開業医は、小児CFSに典型的に見られる複雑な様相の症状は、神経衰 弱を示しており、神経症であると、教えられます。
7. 子供達は自分の悪いところを大人達に訴えるのは辛いのです。特に、大人が子供を疑っ ている場合がそうです。
8. 親達は医師を怖がっているので、間違った診断をされたと感じても、そう主張することがで きません。親達には、時間とお金と経験が不足していることから、医師(専門家)の迷宮に 入り込んでしまいます。そして保険会社の紹介で、ほとんどの小児CFSの診断がなされてい る大病院へたどり着くのです。
以上のように、驚くことに、どんな子供達もこのような条件の下で診断をされているのです。 今の時点で、診断を受けている、または見過ごされている子供達がどれだけいるのか、誰にも分かりません。しかし、そのような子供達がたくさんいるのは間違いありません。 そして、私達は、将来、この問題がもっと注目を集めるようになって行くことを願っています。 |
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