ホームバウンド

Nichole Foster


教育、非営利目的のみ、このテキストの使用が許可されています。引用時には、著者名を明記してください。

授業が始まると、先生が宿題を後ろから前の人に渡して下さいとみんなに言う。あなたは、後ろの席の女の子から宿題をもらおうと手を伸ばす。でも、何も返事が無い。振り返ってみるとその女の子は今日もお休み。

休みが2週間以上も続くと、あなたは、”あの女の子”はどうしたんだろうと気になり始める。そして、回りの友達にちょっと聞いてみる。「ねえ、僕の後ろの女の子はどうしちゃったのか知ってる?」

周りの友達はいろんな事を言う。

「引っ越したって聞いたけど。」近くに座っている子が言う。

「私は、やめちゃったって聞いたわ。」隣の列の女の子が言う。

「もしかしたら、死んじゃったのかもね。」前に座っている男の子が振り返って、笑いながら言う。

 あなたは、肩をすくめると、また授業にもどり、そして、そのことを深く考えることも無く、居眠りをはじめる。そして、次の日の宿題を提出するときまで、その女の子のことを思い浮かべることは無い。

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もしかしたら、彼女は死んでしまったのかもしれません。


 ここで、私が、その女の子がどうしているかをお話しようと思います。なぜって、それは私のことなんですから。でも、お墓の中からこれを書いているのではありません。ちゃんと幸せに生きています。完全に健康であるとはいえないけれど、お墓の中とはだいぶ違うところにいます。私はただ家から出られないだけなんです。

 ほとんどの人は何だろうと思っているかもしれないけれど、”ホームバウンド”というのは理由があって学校にいけない場合のことなんです。そういうと、たぶんあなたは、「学校へ行くのを、まだあきらめた訳じゃないんだ」と思っているかもしれません。学校へ行かない代わりに、じゃあどうなるかって言うと、学校が私のところへやってくるんです。一週間に一回から二回、1時間ぐらい先生が来てくれるんです。

「すごい!私も病気になって、ホームバウンドをやりたい!」って友達から何度言われたかしれません。

そういうときにはいつも「だめよ」って言い返すんです。

 その理由は、先ず、私にとって一番重要なこと、家から出られないぐらいの病気ということは、家にいても何にもできないぐらいの病気だってこと。薬を飲んで、宿題をして、休憩する、これが私の毎日。みんなが私の一日をどう考えてるか知らないけれど、私は、パーティをしたり、たくさん楽しいことをしたりはしていません。

 そして、その次は、楽しいことが全部できなくなっちゃったってことです。病気になったことで、考えていた色々なことができなくなってしまいました。クラブ活動に参加したり、学校が終わった後、遊びに行ったり(全員がそれを楽しいと思っているわけじゃないって思うけど、そうだけど、私はクラブ活動がしたいんです)。映画を見に行ったり、友達とモール(商店街)に行ったりなんかは、ぜんぜんできなくなってしまいました。ずーっと家の中にいるのは、ほんとに退屈です。たまに学校の友達が会いに来てくれたりすると、質問攻めにされちゃうし。

 分かってもらえると思うけど、ホームバウンドっていうのは、少なくとも私の場合は、毎日学校に行きたくても行くことができないことなんです。ホームバウンドを続けるのは簡単だけど、でもその代わり、学校にはほとんど行けないし、学校の勉強も遅れてしまいます。でも、家から出られないというわけではありません。単調すぎる生活にならないように、たまに外に出るときもあります。だから、もしどこかのお店やどこかの場所で私を見かけても、びっくりしないで下さい。キャビンフィーバー(訳者注:狭い部屋で長く生活したため生じるいらいらやノイローゼ、一人または小人数で社会から離れた場所、または密室で生活することに起因する異常過敏症のこと)にならないようにしてるだけなんですから。

 信じてもらえるか分からないけれど、学校に行かないと、学校が恋しくなってくるんです。毎朝ロッカーの前でみんなとおしゃべりをしたり、授業が始まりそうになって、あわてて廊下で手を振ってみんなと別れたり、お母さんや、兄弟や姪以外の人と毎日会ったりすることが恋しくなるんです。ホームバウンドは、その言葉の響きほどいいものではありません。それは、いろいろなものを私から、"あの女の子"から奪ってしまうからです。




翻訳:
Jp-Care




原文:
For Parents of Sick and Worn-Out Children
by Frank Albrecht, PhD

The regional clinic at Talbot
17S. Washington Street
Easton, MD 21601
TEL: 410-822-5580
Email: franka@skipjack.bluecrab.org



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