CFS-FAQ 第一章

よくある質問と回答

 

R.Burns and CFS Internet Gtoup

Mail Magazine ME/CFS Information, No.71-No.74, 2003.3.27-2003.4.5

サイト:http://www.cfs-news.org/faq.htm
原題:CFS FAQ
著者:R.Burns and CFS internet group



第1章: はじめに




1.01 CFSとは何ですか?

慢性疲労症候群(CFS)は、新しい疾患であり、極度の疲労(強い消耗感、極端なスタミナ不足)、精神的障害、風邪に似た様々な症状によって特徴付けられます。この病気は、アメリカでは慢性疲労免疫障害症候群(CFIDS)、アメリカ以外では、通常、筋痛性脳脊髄炎(ME)として知られています。また、以前は慢性エプスタインバーウィルス(CEBV)として知られていました。

主な症状として、極度の疲労、疼痛、混迷があり、胃腸障害も多く見られます。その他にも多くの症状を呈しますが、これらは患者によって大きな個人差が見られます。そういった症状の例としては、ストレスのかかる活動後の疲労、頭痛、のどの痛み、睡眠障害、体温の異常などがあげられます。

症状の重さは、患者により大きく異なり、また、同じ患者であっても時期によっても異なります。その幅は、ストレスを受けた後によく見られる疲労から、寝たきりで動けない状態までにわたります。症状は、寛解/増悪を繰り返し、時期によって現れる症状が異なる場合が多く見られます。このように、病気の原因が明らかになっていないことに加えて、症状の大きな変動は、この病気の診断を困難にしています。




1.02 CFSの原因は何ですか?

病気の原因は、まだ、はっきりしていません。現在の学説では、神経内分泌系障害、ウイルス、環境毒、遺伝素因、またはそれらの複合したものであると考えられています。単球増加症候群となるエプスタインバーウイルス(EBV)が、CFSを発症させるのではないかと考えられた時期もありましたが、最近ではあまり研究が行われていません。CFSは慢性的に免疫反応を刺激しているように見えますが、しかし、それが実際の感染に反応しているのかどうか明かになっていません。つまり、これは免疫機構自身の障害なのかもしれません。

最近、Prof. Mark Demitrackにより、「CFSは考えうる病因のどれかを持ついくつかの疾患が重複しているのではないか」という考え方が提唱されています(それは、1つの原因で高血圧という状態にならないの同じです)。また、身体的、感情的ストレス要因がCFSを悪化させるようだということが知られています。

現在、HHV6などのヘルペスウィルス、腸内ウイルス、レトロウイルスなど、ウイルスについていくつかの研究が行われています。さらに、遺伝体質、ストレス、環境、性別、年齢、および既往疾患などの共通因子が病気の発症と経過に重要な役割をしていると考えられています。

多くの研究者により、CFSは大きなストレスを生じさせる出来事が起こると、それが引き金となって発症するのではないかとの指摘がなされてきました。しかし、この疾患はそれよりも前から潜在しているものと思われます。ウイルス感染、頭部のけが、手術、抗生物質の濫用、トラウマを受けたことにより、CFSが発症する人もいるでしょう。しかし、それら自身が一次病因であるとは考えられません。




1.03 CFSは本当に病気なのですか?

現在、多くの臨床医は、まだCFSが本当の病気ではないと考えています。しかし、徐々に受け入れられてきています。この消極性は、次のことによるものです。(1)特定の原因がまだ見つかっていない、(2)医師が病気を特定するためのマーカーがない、(3)大部分の医師が、この病気の存在を証明している査読論文を知らない。

CFSのような新しい病気は、医療界に受入れられるまでに何年もかかるのが一般的です。そういった病気の患者は、その間、「精神的病因である」と考えられてしまい、見過ごされてしまいます。同様のことが、CFSにもあてはまります。

しかし、第一級の研究者達は、CFSは存在し、それが器質的疾患であることを示しています。そういった研究には、Anthony Komaroff (Harvard)、Jay Levy (UCSF)、Nancy Klimas (U. Miami)、Andrew Lloyd (U. New South Wales)、Stephen Straus (NIH)らによる研究があげられます。

医師や研究者には、下記の文献が有用でしょう。

Levine P; et al. "CFS: Current Concepts" (proceedings of the Oct. 1992 CFS medical conference), Vol. 18 Suppl. 1, January 1994, Clinical Infectious Diseases.

Klimas N; Salvato F; Morgan R; Fletcher M; "Immunologic abnormalities in chronic fatigue syndrome". J of Clinical Microbiology 28:1403-1410 (June 90) [CFS患者におけるNK細胞(免疫細胞の一種)機能障害を示す研究; 他の異常]

Buchwald D; Komaroff A; Cheney P; et al.; "A chronic illness characterized by fatigue, neurologic and immunologic disorders and HHV-6 infection". Ann Int Med 116:103-112 (Jan 1992) [多くのCFS患者がHHV-6感染を示す研究]

Demitrack M; Dale J; Straus S; et al.; "Evidence for Impaired Activation of the Hypothalamic-Pituitary-Adrenal Axis in Patients with Chronic Fatigue Syndrome". J of Clinical Endocrinology & Metabolism 73:1224-34 (Dec 1991) [CFS患者の脳における化学物質異常を示す]

Straus S; Strober W; Dale J; Fritz S; Gould B; "Lymphocyte Phenotype and Function in the Chronic Fatigue Syndrome". J of Clinical Immunology 13:30-40 (Jan 93) [CFS患者におけるT4細胞(一種の免疫細胞)異常を示す研究]

Lusso P; Malnati M; Garzino-Demo; Crowley; Long; Gallo; "Infection of natural killer cells by human herpesvirus 6". Nature 362:458-462 (April 1 1993) [HHV-6 -- 以前CFS患者で見つかった。現在、NK細胞(一種の免疫細胞)を殺すことを示す。小さいが研究で重要な進歩]

Schwartz R, Komaroff A, Garada B, Gleit M, Doolittle T, Bates D, Vasile R, Holman B. "SPECT Imaging of the Brain: Comparison of Findings in Patients with Chronic Fatigue Syndrome, AIDS Dementia Complex, and Major Unipolar Depression" AJR 1994:162:943-951.

Schwartz R, Garada B, Komaroff A, Tice H, Gleit M, Jolesz F, Holman B. "Detection of Intercranial Abnormalities in Patients with Chronic Fatigue Syndrome: Comparison of MR Imaging and SPECT" AJR 1994:162:935-941.

Rowe, P; Bou-Holaigah, I; Kan, J; Calkins, H;. "Is Neurally Mediated Hypotension an Unrecognized Cause of Chronic Fatigue?". Lancet 345:623-624 (March 11, 1995).

Bou-Holaigah, I; Rowe, P; Kan, J; Calkins, H. "The Relationship Between Neurally Mediated Hypotension and the Chronic Fatigue Syndrome". JAMA, Sept. 27, 1995 274:12:961-7.

Suhadolnik RJ, Peterson DL, O'Brien K, Cheney PR, et al. Biochemical Evidence for a Novel Low Molecular Weight 2-5A-Dependent RNase L in Chronic Fatigue Syndrome. Journal of Interferon and Cytokine Research, July 1997, 17:377-385.




1.04 どんな人がCFSになるのですか?

この問題に関しては、あまり研究が行われていません。これは免疫関連疾患で普通に見られる値であるとの指摘もありますが、CFS患者の70〜80%は女性であることを示している報告がいくつか見られます。また、CFSは、低所得者層やマイノリティでは、あまり見られないという研究結果もいくつか報告されています。しかし、平均的なCFS患者は、CFSの診断を受けるまでに数多くの医師にかかっており、医療にお金をかけられる人だけがそのような研究の対象となってしまうため、その結果、所得層と人種に偏りが見られるのではないかとの指摘されています。




1.05 もっとふさわしい病名に変更するべきではないでしょうか?

CFSという病名がアメリカのCDC(Centers for Disease Control=疫病対策センター)によって1988年に承認されて以来、この病名はこの疾患を軽視しており、正当な疾患ではないのではないかという考えを促していると、多くの不満の原因となっています。現在のアメリカの方針としては、数多くの医学文献でこの病名が既に用いられているため、少なくともバイオマーカーが見つかり、それが認められるまで、病名の変更は行わないほうが良いと考えています。病名の変更に関しては、患者コミュニティで現在も議論が続いています。この問題についての詳細は、http://www.cfs-news.org/name.htmのWebページを参照していただくか、EメールにGET CFS NAMEと入力してLISTSERV@MAELSTROM.STJOHNS.EDに送信していただくか、CFIDS Association of AmericaのWinter 1997 CFIDS Chronicleを参照してください。(以下の質問5.06参照)。



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訳者注:
これらは主にアメリカの患者を対象にしているため、日本の状況と異なることがあります。

翻訳:Co-Cure-Japan, M.N.


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