CFS-FAQ 第二章

よくある質問と回答

 

R.Burns and CFS Internet Gtoup
Mail Magazine ME/CFS Information, No.71-No.74, 2003.3.27-2003.4.5
サイト:http://www.cfs-news.org/faq.htm
原題:CFS FAQ
著者:R.Burns and CFS internet group



第2章: 医学的な問題




2.01 CFSを診てくれる良い医師はどのように探したらいいでしょうか?

この病気に精通している医師を探すことはとても重要なことです。そのほかの疾患(自己免疫疾患、ガン、肝炎、糖尿病など)でも、CFSと似た症状を呈することがあり、実際に別の病気にかかっているのに、正しく診断されていない場合には、効果的な治療を行う機会が失われてしまうかもしれません。

CFSの診断と治療の経験を積んだ医師を見つけるのは、まだ簡単なことではありません。自分の地域にいるCFSをよく知る医師を見つける場合には、その地域の支援団体が最も良い情報源となるでしょう。地域の支援団体を見つけるには、あなたの国の患者団体(質問5.06参照)の1つに連絡するのが一番いいでしょう。自分の地域にCFSの知識のある医師がいないので地域外の専門医を探したいときなど、その患者団体のニュースレターにそのような専門医について書かれてあることもあります。

医師がCFSに理解を示していても、CFSに対する経験があまりないという場合には、CFS治療に関する医学記事を集め、医師に目を通してもらうといいでしょう(2.036を参照)。

Camilla Cracchiolo, R.N.著、"Dealing with Doctors When You Have CFS"が役に立つでしょう。ご希望の方は、EメールでGET CFS HANDLEDRと入力してLISTSERV@MAELSTROM.STJOHNS.EDUまでお送りください。





2.02 どのような症状によってCFSの診断が行われるのですか?


2.021 CFSの定義


以下に示す公式な研究定義に加え、患者や多くの経験を持つ臨床医により、CFSに特徴的な症状のパターンがあることを指摘しています。それらは、1.01に書かれている症状に加えて、認知障害が何年にもわたって増加する傾向があること、脳スキャンにより脳内血流量が減少することなどが多く観察されています。

CFSは、各国の各種の医学団体により、多少異なる定義がされています。アメリカCDCで認められた1994年の研究定義では、CFS症例の識別に対する段階的アプローチが提案されています。その第一段階は、慢性疲労の臨床的評価(自覚する持続/再発を繰り返す6ヶ月以上続く疲労)です。

次の、慢性疲労の原因となる病態は、CFSの診断から除外されます。

現在、慢性疲労を説明できる病状を持っている(疲労を説明でき、完治が確認されていないすべての疾患を含む)、精神病性または気分の落ち込み伴ううつ病の診断を受けたことがある、 双極性気分障害、精神分裂症のすべてのサブタイプ、妄想のすべてのサブタイプ、痴呆のすべてのサブタイプ、拒食症/過食症、発症の2年前までに薬物濫用の経験がある、深刻な肥満。

慢性疲労の診断から除外しない病態。

ラボテストで確認ができない病態(線維筋通症、不安症、身体表現性障害、非精神病性または非うつ病性のうつ状態、神経衰弱、多種化学物質過敏症など)、慢性疲労を生じさせる可能性があり適切な治療が行われている疾患、慢性疲労を生じさせる可能性がありすでにその治療が完了している疾患、それ自体どの除外疾患の存在をも十分に示唆していない病態。

上記の基準を満たした場合、次にCFSの主要基準が適用されます。慢性疲労症候群の診断は、次の項目を満たすかどうかによって行われます。

1.臨床評価がなされ、説明ができない持続したり再発する慢性疲労があり、先天的ではなく新しく発症したもの、または明確な発症が観察されているもの、現在の活動によるものではなく、休息によって軽減されない疲労、それにより、仕事、就学、社会活動、個人的の活動が以前に比べて大きく減少している。

2.次の症状のうち、同時に4つ以上みられている。すべての症状は6ヶ月以上、持続/再発を繰り返しており、疲労よりも前に生じていたものではないこと。自覚する短期記憶力や集中力の低下により、仕事、就学、社会活動、個人活動が以前に比べて大きく低下している。

- のどの腫れ
- 頚部または腋窩のリンパ節の痛み
- 筋肉痛
- 関節の腫れや炎症がない複数箇所の関節痛
- 新しい種類、パターン、程度の頭痛
- 疲れの取れない睡眠
- 24時間以上続く労作後全身倦怠感

このCDC定義に関する論文はこちらです。
Keiji Fukuda、Stephen Straus、Ian Hickie、Michael Sharpe、James Dobbins、Anthony Komaroff、International CFS Study Group、"The Chronic Fatigue Syndrome: A Comprehensive Approach to Its Definition and Study" (Ann Intern Med. 1994;121:953-959)




2.022 臨床所見

Dr. Charles Lappによる記事、Dr. Charles Shepherd、Dr. David Bellの著書など、研究者や経験豊富な臨床医によって書かれた診断に役立つ手引きがあります。2.036治療に関する質問の参考文献を参照してください。

Dr. BuchwaldとDr. Komaroffは、1988年のCDC基準を満たす方々を対象に、最もよくみられる症状に関する調査を行いました [Komaroff AL, Buchwald D. Symptoms and Signs of chronic fatigue syndrome. Rev Infect Dis 1991;13(Suppl 1):S8-11.]。その結果、各症状の発現率は次のようになりました。

症状/徴候 発現率(%)
疲労 100
微熱 60 - 95
筋肉痛 20 - 95
睡眠障害 15 - 90
認識力低下 50 - 85
うつ状態 70 - 85
頭痛 35 - 85
咽頭炎 50 - 75
不安感 50 - 70
筋力低下 40 - 70
労作後の全身倦怠感 50 - 60
月経期前の症状悪化 50 - 60
凝り 50 - 60
かすみ目 50 - 60
夜間多尿 50 - 60
吐き気 50 - 60
めまい 30 - 50
関節痛 40 - 50
瀕脈 40 - 50
ドライアイ 30 - 40
口渇 30 - 40
下痢 30 - 40
食欲不振 30 - 40
咳 30 - 40
指の腫れ 30 - 40
寝汗 30 - 40
リンパ節痛 30 - 40
発疹 30 - 40




2.03 CFSの治療方法はありますか?

多くの治療法があります。ほとんどの治療法に限界はありますが、患者によってその効果は異なり、場合によっては良い効果がみられることがあります。治療に関するFAQが作成されており、これらの問題についてのより詳細な議論が行われています。治療の説明については、この質問以下の項目を参照してください。




2.031 ストレスの回避

奇妙に思えるかも知れませんが、一般的に最も有益なプログラムは、患者がストレスを避けて休みをたくさん取ることです。これは、通常、最も効率的な処方で、一番始めやすい方法でもあります。ストレスとは、楽しくない事柄だけをさすのではなく、生物学的、肉体的、感情的ストレス因子からなり、それにより身体の防衛反応が働き、身体の平衡(ホメオスタシス)を変化させるもののことを意味しています(以下の質問2.04にストレスについて説明があります)。ストレスを避けることに失敗すると、短期/長期にわたる深刻な病状の悪化が多くみられます。多くの患者がこの病気の初期段階でもっとストレスを避けることができていたら、これほど症状が重くならなかったのではないかと考えています。ストレスとこの病気の進行とは密接な関係があるのです。




2.032 薬理治療

病気のメカニズムがわかっていないので、治療はどうしても症状をみながらということになります。役立つ薬としては、免疫調整効果のある薬が有効である場合が多くみられます。CFS患者は、通常、薬に敏感であり、標準服用量の1/4、またはそれ以下から開始しなければなりません。薬は、患者によって「合う、合わない」があります。また、しばらく、効いたように見える薬が後で効かなくなることもあります。

1994年10月のCFS会議で発表された研究によると、次の薬剤が治療に幅広く使われています:疲労、認知障害、およびうつ状態に使用されているSSRI(Zoloft、Paxil、Prozacなどの選択的セロトニン再取込み阻害薬)、睡眠障害および筋肉痛や関節痛に低用量TCA(ドクサピンやアミトリプチリンなどの三環系抗うつ剤)、頭痛およびに筋肉痛や関節痛にNSAID(イブプロフェンやナプロキシンなどの非ステロイド系抗炎症薬)。よく処方されるその他の薬としては、Klonopin(クロノピン)、筋注ガンマグロブリン(IMgG)、栄養サプリメント(特に、抗酸化薬、ビタミンB群(特にB12))、ハーブ、鍼があります。あまり行われなくなった治療法としては、カイロプラクティク療法、静注ガンマグロブリン(IVgG)、kutapressin、抗ウィルス薬、インターフェロン、および伝達因子(transfer-factor)です。

1995年のJohns Hopkins大学の研究により、神経調節性低血圧の治療は、その病態を示すCFS患者に有効であることを示しています。




2.033 エクササイズの役割

CFS患者は、ストレスのかかる活動を避けることが必要です。患者によってストレスの限界は異なり、それは変化してゆきます。しかし、エクササイズができるのであれば、限界を超えないようにして、エクササイズをすることは重要です。もしエクササイズの限界の「見えない線」を超えてしまうと、深刻な病状の悪化を招く可能性もあり、長期的に悪い影響を与えることもあるため、エクササイズをする場合には細心の注意を払って行う必要があります。




2.034 食事制限

CFS患者は、アルコールに弱い傾向があります。その他のお勧めできない食品としては、カフェイン、砂糖、およびニュートラスウィートがあります。多くの患者で免疫系の活性化がみられているため、通常よりも、サプリメントを取るようにし、失った分を補充することが重要となるでしょう。

多くの患者で、食物過敏であったり、食物過敏になる場合がみられます。そういう場合には、問題を引き起こす食物を避けることで、症状は軽くなります。また、患者は、体重を減らすことができるような激しいエクササイズができないため、太る傾向が見られます。そのため、食餌療法を行う場合には、このことも考える必要があります。




2.035 二次的問題

イーストなど、関連する問題がいくつかあり、それらに注意しておく必要があります。また、CFSにはいろいろな症状があるため、すべての異常をこの病気のせいにすることは簡単です。しかし、CFS患者も同様に他の病気にかかる可能性があり、健康状態を定期的にチェックし、病気の進行に伴う変化について医師と相談することが必要です。




2.036 参考文献

以下は、あなたの主治医に対しても有効であると思われる、CFSの治療法に関する文献です。

一般的な方法
"Management of a Patient with Chronic Fatigue Syndrome" by Nelson Gantz; appears as Chapter 14 in the book "Chronic Fatigue Syndrome" edited by David Dawson and Thomas Sabin, 1993, Little, Brown & Co.

"Treatment of the Chronic Fatigue Syndrome: A Review and Practical Guide", Edith Blonde-Hill and Stephen D. Shafran, Drugs 46(4):639-651, October 1993.

"Psychotropic Treatment of Chronic Fatigue Syndrome and Related Disorders", PJ Goodnick and R Sandoval; J Clin Psychiatry 54(1):13-20 January 1993

中程度/積極的な方法
[CFIDS Association of America, Inc., PO Box 220398, Charlotte, NC 28222-0398 USAへメールで注文することができます。また、Eメール検索でインターネットでも利用できるものもあります。方法については以下を参照してください]

"Chronic Fatigue Syndrome is a Real Disease"、Charles Lapp著、North Carolina Family Physician、1992年冬期。3.00ドル

92年9月の連載記事で、"Diagnosis" CFIDS Chronicle版、Dr.Bell、Dr.Calabreseら、Dr.CheneyとDr.Lapp、Dr.Jay Goldstein、Dr.HickieとDr.Wakefield、Dr.Klimas、他の役立つ手紙とレポート。8.00ドル

1993年秋の連載記事で、"Treatment" CFIDS Chronicle版。Dr.Cheney とDr. Lapp、Dr. Dimitri Viza、Dr. Giancarlo Pizza、Dr. Perry Orens、Dr.Edward Conley DO、Dr. Burke Cunha、Dr. James McCoy、Dr.Jay Goldstein他著。10.00ドル

書籍: "The Doctor's Guide to Chronic Fatigue Syndrome"、Dr.David Bell著、1994年。21.00ドル

書籍: "Living With M.E"、Dr. Charles Shepherd, M.D著、1992年改訂。15.00ドル

インターネットにSTJOHNS Listservで利用できるCFSの診断と治療に関する一連の医学記事があります。このドキュメントの最後にある付録2を参照してください。




2.04 ストレスは、CFSにどのような影響を及ぼしますか?

予備的研究から、CFSでは、身体のストレス反応系に影響を及ぼす脳障害、特にHPA障害が生じていることが示唆されています(質問2.16参照)。CFS患者は、通常、ストレスへの過敏反応がみられます。ストレスは、楽しくない事柄だけをさすのではなく、生物学的、肉体的、感情的ストレス因子からなり、それにより身体の防衛反応が働き、身体の平衡(ホメオスタシス)を変化させるもののことを意味しています。この生理学上のストレスは、微妙であり、気づいていない場合もあります。たとえば、騒音がしたり、まぶしい光を浴びたりすることなどがあげられます。

強いストレスの原因となる出来事が、CFS発症の「引き金」(質問2.06参照)であると考えられる場合が多くみられます。また、すでに発病している場合には、通常、ストレスは症状を悪化させます。多くの場合、ストレスは身体的にはなにも関係がなく、純粋に精神的な現象であると間違った解釈がなされています。そのため、ストレスと関連が見られるからという理由で、CFSを身体的な病気ではなく「心理的な病気」であると考えている人もいます。しかし、医学的研究により、ストレスは、免疫が介在する疾患で重要な役割を持っていることが示されており、実際に精神神経免疫学という新しい研究分野として、この現象の研究が行われています。

HPA障害と神経伝達物質の異常により、CFS患者は、非常にいらいらすることがあり、パニック障害を引き起こすこともあります。これらの振舞いは、間違って解釈され、そしてCFSが単なる心理的疾患であるという間違った考えの根拠となっています。

うつ状態については、質問2.11や第3章「CFSよって生じる生活上の問題」を参照してください。




2.05 現在どのような研究が進められているのですか?

CFSの可能性のある原因、多くの症状のメカニズム、考えられるバイオマーカー、治療、および疫学研究など、数多くの研究が行われています。

Dr. Mark Demitrack (U. Michigan)とDr. Stephen Straus (NIH)らは、CFSの主要な解釈手段として、HPA axis障害の研究を行こなっています。Prof. Robert Suhadolnik (Temple U., Philadelphia)は、患者の血液中のバイオマーカーを探しています。Dr. Hugh DunstanとDr. Timothy Roberts (U.Newcastle, Australia)は、尿中のバイオマーカーを研究しています。Dr. Peter Rowe(Johns Hopkins大学)は、CFSと神経調節性低血圧との関係の可能性を研究しています。Dr. Anthony Komaroff (Harvard)とDr. Dharam Ablashi(Georgetown)は、HHV-6とEBVの役割のについて研究しています(これらの略語については付録3を参照)。Dr. Andrew Lloyd、Dr. Ian Hickie、Dr. Denis Wakefield、およびDr. Andrew Wilson (Sydney, Australia)は、CFSの種々の側面について、幅広く研究しています。Dr. W. John Martin (U. So. Calif.)は、ステルスウィルスを研究しています。Dr. Michael Holmes (U. Otago)は、別の不思議なウィルス様粒子を研究しています。Dr. Nancy Klimas、Dr. Roberto Patarca (of U. Miami)、およびDr. Jay Levy (UCSF)は、免疫学的異常を研究しています。Dr. Paul Cheney、Dr. Charles Lapp、およびDr. Jay Goldsteinは、種々の治療法について研究しています。Dr. Simon Wessely、Dr. Michael Sharpeとイギリスの心理学者達は、CFSにおける認知行動療法の有効性を研究しています。Dr. Keiji FukudaとDr. William Reevesが率いるCDCチームは、アメリカにおける有病率に関する研究を始めています。これらは、現在進行中の重要な研究のほんの一部です。




2.06 CFSの発症にはどのようなものがあるのでしょうか?

この病気は、過半数の患者で急性発症型を示し、インフルエンザにかかったような症状で始まります。しかし、この「インフルエンザ」は、完全に治らないのです。その他の多くの患者では、長期間かけて徐々に発症に至ります。

多くの場合、強いストレスの原因となる出来事が病気の「引き金」になっていると考えられます。たとえば、重い頭部損傷などで始まる場合が多く見られています。しかし、そのようなことがその後のCFSと明確に論理的に説明できないため、CFSはそれ以前から潜伏しており、心的外傷によるストレスにより、ストレス過敏というこの病気の特徴が刺激されたためであると多くの人が考えています。また、環境中のストレス因子(微生物や汚染)が発症と関係があるのではないかと考えている研究者もいます。




2.07 CFSはどのくらいで治るのでしょうか?

この病気は、回復するまでの期間に大きな差があります。1年か2年で回復する場合もわずかに見られますが、それよりも発症後3年から6年で回復する例が多く見られます。そのほか、10年以上かかる場合や、依然として病気が継続している方々もいます。CFSには周期があり、よくなったと思っても、それが本当に回復したのか、単にCFSの周期なのかわからないため、イライラが募ることになります。




2.08 CFSは伝染するのですか?

病気の原因がわかっておらず、伝染の問題についても不明です。多くの研究から、CFSの伝染とちょっとした接触/密接な接触との間には関係がないことが示唆されています。しかし、一方で、多くありませんが、CFSの集団発生も報告されています。なぜ集団発生が起こるのか、なぜ親密な家族内で伝染しないのか、この病気の不可解なことの1つです。




2.09 CFSは遺伝するのですか?

いくつかの研究から、CFSに遺伝的要素がある可能性が示唆されています。これは、CFSがある程度の免疫障害を持っているためで、驚くことではありません。免疫関連疾患には遺伝的要素を持っている場合がよく見られています。しかし、このことに対する確証はありません。また、集団発生が見られているという事実からは、遺伝的要素が唯一の因子であるという点については疑問があります。




2.10 CFSで死に至ることはありますか?

本質的に答はNOです。CFSがどのように身体に作用しているかという知見からは、死に至る可能性は、ほとんど示すことができません。新陳代謝の低下や筋力低下(心機能の低下が見られる場合もあります)などは、死亡率を上げているかもしれません。しかし、原則的にCFSが死に至る病であると考えるべきではありません。

一方で、重度のCFSの場合には、深刻な状況に陥ることがあります。周りの方々や医師のこの病気への理解はあまりにも乏しく、仕事を失い、家族や友人からのサポートを失い、そして自分の身の回りのこともできなくなり、患者の生活は奪い取られてゆきます。こういった数多くの不条理で深い痛みを伴う物事に直面し、自殺という選択肢を選ぶCFS患者も多いのです。この場合、何が死亡の原因だったのでしょうか?




2.11 CFSとうつ病は関係がありますか?

ヒステリー、うつ病、身体表現性障害など、新しく出てきた多くの病気は、医学界に受け入れられるまで、最初は軽んじられていました。100年前には、ポリオがまったく同じように見過ごされていました。CFSに関心が向けられるようになった現在でも、その多くの症状がうつ病と関連付けられることから、新しい知識を吸収していない多くの医師は、それがCFSなのだと考えています。ごく最近の研究、特にDr. Demitrackによる研究から「CFS患者のコルチゾールレベルは低いが、うつ病患者では高い」という結果が明らかになっており、CFSはうつ病ではないことを示しています。その他の顕著な違いとしては、CFS患者は、能力を過信しすぎる傾向がある、人生に強い関心を持っている、運動をしてもあまり効果が見られないなどの傾向が見られますが、うつ病の患者には、一般にまったく逆の傾向が見られます。

この問題の政治経済学的側面として、健康保険会社は安価で短期間で済む一時的な病気として患者を分類するように勧めていることがあげられます。そして、うつ病は、短期間で治療可能な病気と考えられています。

別の問題は、CFS患者の仕事、社会生活、家族生活が妨げられるので、CFS患者の生活が破綻した場合に「副次的なうつ病」になる場合もあることです。こういったCFSの間接的な効果について、一部の医師は、それが主因であると考え、CFSの症状によって副次的に生じたものであるとは考えないということもあげられるでしょう。

ストレスと心理学については、上記の2.04も参照してください。CFSとうつ病を含むそのほかの疾患との違いについては、Dr. Calabreseの記事で説明されています(Eメールによる記事の取得方法については、付録2参照)。




2.12 CFSとAIDSは関係がありますか?

CFSとAIDS両疾患のメカニズムが同じでないことは、よく知られています。しかし、ともに免疫系が関係していると考えられること、十分に研究されていない数種のウイルスが影響している可能性があることから、共通するメカニズムがあるのではないかと一部の人(特にNew York Nativeの執筆者Neenyah Ostrom氏)が考えているのも事実です。CFSは、HIVと何の相関もなく、AIDSの様な免疫不全を示さないという事実からも、両疾患は同じものではないことがわかります。今後、こういった免疫関係疾患群の重要性が増していくことでしょう。




2.13 CFSによってガンの確率が増加するのでしょうか?

現在まで、この質問に対する正式な研究報告はありません。この病気を診ている臨床医らは、CFS患者にガンの確率が高くなったと考えていません。しかし、いくつかの研究で、CFS患者ではナチュラルキラー(NK)細胞活動が低下していることが示されことから、この問題が持ち上がってきました。それは、NK細胞がガンに対する最初の防護反応を起こすからです。そのため、これは注意深く見守っていくべき問題です。




2.14 CFSは子供にどのような影響を与えますか?

子供におけるCFSの特殊な点の1つは、子供達はCFSになる前の状態の記憶がまったくないか、わずかしか持っていないので、自己イメージと能力感覚の発育が通常とは異なるという点です。これは、明らかに子供達の自己形成に重要かつ悪い影響を与えます。

"CFIDS In Children"という冊子が、CFIDS Associationで5.5ドル販売されています(住所は、以下の質問5.06参照)。また、子供とCFSに関するWebサイトhttp://www.bluecrab.org/health/sickids/sickids.htmを参照してください。




2.15 CFSと妊娠はどのような関係がありますか?

どちらかといえば、多くの場合で妊娠中は、病気の症状が軽くなる傾向が見られます。また、妊娠中の胎児についても注意すべき問題はありません。その他には、親としての色々な責任があり、それらがストレスとなるため、妊娠を考える場合には考慮しなければならない点です。




2.16 CFSと他の病気(線維筋通症、多種化学物質過敏症、湾岸戦争症候群、神経調節性低血圧、ライム病、カンジダなど)はどのような関係がありますか?

多くの人が、共通のメカニズムがあるに違いないと考えるほど、症状とパターンがよく似たいくつかの疾患があります。いくつかの研究から、視床下部―下垂体―副腎 (HPA)系の機能障害がこれらの疾患の一部またはすべてに関係している可能性があることが示唆されています。HPA系は、ストレス反応やその他の多くの身体機能を制御しています。もし、HPA障害が本当にこれらの多くの疾患で生じているであれば、HPA 系の神経内分泌系メカニズムは複雑かつ微妙であるため、そういった障害における小さな変化は、これらの類似疾患で見られる多くの変化を生み出す可能性があるという点を、意外に思われる方もいるかもしれません。

CFSとその他の疾患の類似点と相違点については、Dr. Calabreseらによる記事があります。- 付録2参照。これらの関連疾患についての議論や情報は、ネットワーク上に多くの情報源があります。質問5.04のCFS Network Helpを参照してください。




2.17 CFSは、特に線維筋痛症とどのような関係がありますか?

前の項目で説明したように、CFSとFMが同じ病気かもしれないと多くの方が考えています。ただし、CFS研究者のDr. Paul Cheneyは、CFS患者はエクササイズにまったく耐えられないが、線維筋通症患者にはエクササイズを治療として勧めることができると述べています。また、Dr. Muhammed Yunusによる記事では、これらの2つの状態を比較し、説明がされています(付録1参照)。

インターネットとUsenet上に線維筋通症の患者の討論グループ、Webページ、情報ファイルなどがあります。Web上の線維筋通症情報については、http://www.cfs-news.org/fibro.htmのリンクが有効です。討論グループは、Usenet上のニュースグループalt.med.fibromyalgiaがあります。EメールでSUB FIBROM-Lと姓名を入力して、LISTSERV@MITVMA.MIT.EDUに送信すると、メーリングリストに登録できます。患者用と医師用の線維筋通症のFAQ、また疼痛に関するヘルプファイルがあり、すべてEメールで利用できます。FAQを取得するには、以下の内容のEメールを作成し、LISTSERV@MITVMA.MIT.EDUまで送信してください。

GET FIBROM-L PT-FAQ
GET FIBROM-L MD-FAQ
GET FM-PAIN HANDOUT




2.18 CFSと神経調節性低血圧は、どのような関係がありますか?

これは、新しい研究分野です。Johns Hopkins大学の研究者達によって、CFSと神経調節性低血圧(NMH)と呼ばれる確立された心疾患との間に関係があることが指摘されました。この既知の心疾患に対しては、医科学的に認められた診断法と治療法があり、CFS研究と治療に重要な関係をもっています。これらの研究論文は、上記の質問1.03の最後に載っています。この研究を説明する特別の版CFS-NEWS電子ニュースレター(45版)を取得するには、EメールにGET CFS-NEWS 045と入力して、LISTSERV@HEALTH.STATE.NY.USに送信してください。

神経調節性低血圧は、血管抑圧性失神としても知られており、血流や血圧の調節障害が関係しており、たびたび気絶を引き起こします。Johns Hopkins大学の研究から、頻繁には気絶をしないが、この疾患にかかっている場合が多く見られることを示唆しています。そして、このグループに属する多くの方に一般的に慢性疲労、特にCFSが見られます。治療法の効果が見られたJohns Hopkins大学の研究の被験者達は、この結果について熱心ですが、Johns Hopkins大学の研究者達は、研究の初期段階における結果を主張することにかなり慎重になっています。この治療法の結果にはとても希望がもてますが、すべての患者がこの治療法の効果が見られるわけではありません。




2.19 CFSとエプスタインバーウイルスは、どのような関係がありますか?

エプスタインバーウイルス(EBV)は単核球症候群の病因であり、1985年に発表された研究によりCFSと強い相関があることが示唆されました。しかし、最初報告された強い相関が、実は小さかったというその後の研究報告を、多くの医師は読んでいません。明確な相関に関しては次の論文で示されています。

Straus SE, Tosato G, Armstrong G, Lawley T, et al. Persisting illness and fatigue in adults with evidence of Epstein-Barr infection. Ann Intern Med 1985; 102:7-16.

後の研究から、多くのCFS患者でエプスタインバーの発現がまったく見られませんでした。これは、次の論文に示されています。

Buchwald D, Sullivan JL, Komaroff AL. Frequency of "chronic active Epstein-Barr" virus infection in a general medical practise. JAMA 1987; 257:2303-7.
Holmes GP, Kaplan JE, Stewart JA, et al. A cluster of patients with a chronic mononucleosis-like syndrome. JAMA 1987; 257:2297-302.


EBVや他のウイルスは、究極的には多くの患者のCFSに何らかの役割をするかもしれません。しかし、上記の研究が示しているように、EBVが陰性であるかどうかだけでCFS診断を行うことは適切ではありません。



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訳者注:
これらは主にアメリカの患者を対象にしているため、日本の状況と異なることがあります。


翻訳:Co-Cure-Japan, M.N.



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